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2012年11月5日月曜日

Reflections

あれは、12歳の誕生日だったと思う。
ばあちゃんに、プレゼントは何が欲しいかと訊かれて、
これを買ってもらったのだ。
私が生まれて初めて手に入れたLPレコード。


寺尾聰 「Reflections」





















ついでに言うと、私、恋していたのよ。寺尾聰に。
小学生の分際で。生意気でしょ?




どういう巡り合わせなのか、この一ヶ月ほどの間に2回も
この「Reflections」を思い出す機会があったのだ。
最初は、フラカンのラジオで。
ミスコニが収録曲の『HABANA EXPRESS』を選曲してて、
竹安が初めて買ったLPが「Reflections」で、私と同じ!っと、
ちょっと嬉しくなったりした。

2回目は、コレクターズのコータローさんのTweetで。
「名曲だらけ」と評されている。

そして、コータローさんもTweetしているように、
バックで演奏しているバンドが、パラシュート・・・というらしい。
私は初めて知ったのだけれど、音楽好きの妙齢のご婦人お二人から、
教えていただいたのだ。
どうやら、知る人ぞ知る実力派のバンドのようである。

これは、聴きなおしてみる価値あり!と思い、近所のTSUTAYAへ。
意外と、こういうのは置いてあるんだよねぇ。
(ヴァン・ヘイレンやポール・ウェラーは置いてないけど)

で、30年ぶりに聴いてみた。
そして、ぶっ飛んだ!
何もかもが完璧で、カッコいいのである。
と、一言で終わらせてしまうのもアレなので、
ここからグダグダと書くけれど、どう転んでも結論は変わらないから、
時間のない方は、読まなくてもよろしい。(←エラそう?)



とにかく、サウンドが素晴らしい。
ちょっと歌モノとは思えない、フュージョンっぽいサウンドで、
その洗練されたアレンジに呆然としてしまう。
私は、こんなのを小学生のときに聴いていたのか・・・と。
確かに、楽器個別の音色なんかが当時主流のものだったり、
わっ、懐かしい!というようなところもあるけれど、
ぜんぜん古臭さを感じないことに驚く。
めちゃくちゃカッコいいじゃないか!

パラシュートのメンバーでもある井上鑑氏が全曲アレンジを手掛けていて、
一曲一曲のクオリティの高さはもちろんのこと、
アルバム全体を通してのバランスの取り方が見事なのだ。
それぞれ個性的なアレンジを施された曲が集まっているのに、
なぜかトータルで聴くと、一つの世界観に集約されている。
まるで、映画のサントラみたいだ。

映画音楽のようにドラマチックに仕上がってる要因は、他にもある。
リリック、歌詞である。
10曲中、松本隆氏の作詞が3曲。
その内には、大ヒット曲の「ルビーの指環」も含まれている。
残りの7曲はすべて、有川正沙子氏の作詞。
そして、この有川氏の仕事ぶりが、ハマっているんだよね。

“大人の恋”というようなコンセプトがあったのだろうとは思うが、
大人の男の恋心が、スタイリッシュに歌われていて、
ただ、スタイリッシュといっても、
昨今の安っぽいテレビドラマのような軽薄さはなく、
ドキドキするほど艶かしい、男の色気がムンムンなのである。

「愛する人を失って悲しみにくれる男」だとか
「ひと夏だけの恋の激しさに翻弄される男」だとか、
これでもかというほど、女心をくすぐる男性像、シチュエーションを
寺尾聰という役者に与えている。
そして、演じる方もそれを見事に演じきってるわけだ。

有川氏が寺尾聰に惚れ込んで、
これらの作品群を生んだのではないかという見方もできるけれど、
そう単純でもないような気もする。
もちろん、寺尾聰という人物からインスパイアされて、
そういう男性像が描かれたという面も多々あるだろうけれど。

寺尾聰という、大人の色気を持ち合わせた男を媒介として、
世の女たちに夢を見せてあげようとしたのではないだろうか。
歌の中に出てくる女を自分と重ねて合せ、擬似恋愛を
体験させようとしたのではないか。
男の一人称で語りながらも、
そこには、女を夢中にさせる男性像が描かれているのだ。
どう?素敵でしょ?恋しちゃうでしょ?と、
女心を射抜こうとしている有川氏の辣腕ぶりには、平伏してしまう。

当時、ませガキの小学生だった私は、
まんまと、この戦略的な大人っぽさに参ってしまったのだ。
今にして思うと、よくも、こんな大人の色香が理解できたものだと
驚きである。
きっと、子供特有の鋭さで、何かを嗅ぎつけていたんだろうなぁ。

・・・というようなことを、30年ぶりに聴いて感じたのである。
ちょっとは大人になったかな?

しかし、今聴いても、ときめくことに変わりなし!(結論)




蛇足。
今回借りたCDは「Reflections(+4)」という最新のリマスター盤で、
オリジナルのアルバムには収録されていないシングル曲などが4曲、
ボーナストラック的に収録されていた。
録音時期が「Reflections」より古いということもあるかもしれないが、
楽曲のクオリティの落差に愕然としてしまう。
結果的に「Reflections」の質の高さが、
より一層際立つという意味においては、価値があったかもしれないが、
ちょっと・・・どうなんだろう?
同じ盤に収めることに、疑問を感じてしまうなぁ。



さて、この勢いで「Re-Cool」版も聴くべきでしょうか?
TSUTAYAにあることは確認済みなんですけど。

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