あれは、12歳の誕生日だったと思う。
ばあちゃんに、プレゼントは何が欲しいかと訊かれて、
これを買ってもらったのだ。
私が生まれて初めて手に入れたLPレコード。
寺尾聰 「Reflections」
ついでに言うと、私、恋していたのよ。寺尾聰に。
小学生の分際で。生意気でしょ?
どういう巡り合わせなのか、この一ヶ月ほどの間に2回も
この「Reflections」を思い出す機会があったのだ。
最初は、フラカンのラジオで。
ミスコニが収録曲の『HABANA EXPRESS』を選曲してて、
竹安が初めて買ったLPが「Reflections」で、私と同じ!っと、
ちょっと嬉しくなったりした。
2回目は、コレクターズのコータローさんのTweetで。
「名曲だらけ」と評されている。
そして、コータローさんもTweetしているように、
バックで演奏しているバンドが、パラシュート・・・というらしい。
私は初めて知ったのだけれど、音楽好きの妙齢のご婦人お二人から、
教えていただいたのだ。
どうやら、知る人ぞ知る実力派のバンドのようである。
これは、聴きなおしてみる価値あり!と思い、近所のTSUTAYAへ。
意外と、こういうのは置いてあるんだよねぇ。
(ヴァン・ヘイレンやポール・ウェラーは置いてないけど)
で、30年ぶりに聴いてみた。
そして、ぶっ飛んだ!
何もかもが完璧で、カッコいいのである。
と、一言で終わらせてしまうのもアレなので、
ここからグダグダと書くけれど、どう転んでも結論は変わらないから、
時間のない方は、読まなくてもよろしい。(←エラそう?)
とにかく、サウンドが素晴らしい。
ちょっと歌モノとは思えない、フュージョンっぽいサウンドで、
その洗練されたアレンジに呆然としてしまう。
私は、こんなのを小学生のときに聴いていたのか・・・と。
確かに、楽器個別の音色なんかが当時主流のものだったり、
わっ、懐かしい!というようなところもあるけれど、
ぜんぜん古臭さを感じないことに驚く。
めちゃくちゃカッコいいじゃないか!
パラシュートのメンバーでもある井上鑑氏が全曲アレンジを手掛けていて、
一曲一曲のクオリティの高さはもちろんのこと、
アルバム全体を通してのバランスの取り方が見事なのだ。
それぞれ個性的なアレンジを施された曲が集まっているのに、
なぜかトータルで聴くと、一つの世界観に集約されている。
まるで、映画のサントラみたいだ。
映画音楽のようにドラマチックに仕上がってる要因は、他にもある。
リリック、歌詞である。
10曲中、松本隆氏の作詞が3曲。
その内には、大ヒット曲の「ルビーの指環」も含まれている。
残りの7曲はすべて、有川正沙子氏の作詞。
そして、この有川氏の仕事ぶりが、ハマっているんだよね。
“大人の恋”というようなコンセプトがあったのだろうとは思うが、
大人の男の恋心が、スタイリッシュに歌われていて、
ただ、スタイリッシュといっても、
昨今の安っぽいテレビドラマのような軽薄さはなく、
ドキドキするほど艶かしい、男の色気がムンムンなのである。
「愛する人を失って悲しみにくれる男」だとか
「ひと夏だけの恋の激しさに翻弄される男」だとか、
これでもかというほど、女心をくすぐる男性像、シチュエーションを
寺尾聰という役者に与えている。
そして、演じる方もそれを見事に演じきってるわけだ。
有川氏が寺尾聰に惚れ込んで、
これらの作品群を生んだのではないかという見方もできるけれど、
そう単純でもないような気もする。
もちろん、寺尾聰という人物からインスパイアされて、
そういう男性像が描かれたという面も多々あるだろうけれど。
寺尾聰という、大人の色気を持ち合わせた男を媒介として、
世の女たちに夢を見せてあげようとしたのではないだろうか。
歌の中に出てくる女を自分と重ねて合せ、擬似恋愛を
体験させようとしたのではないか。
男の一人称で語りながらも、
そこには、女を夢中にさせる男性像が描かれているのだ。
どう?素敵でしょ?恋しちゃうでしょ?と、
女心を射抜こうとしている有川氏の辣腕ぶりには、平伏してしまう。
当時、ませガキの小学生だった私は、
まんまと、この戦略的な大人っぽさに参ってしまったのだ。
今にして思うと、よくも、こんな大人の色香が理解できたものだと
驚きである。
きっと、子供特有の鋭さで、何かを嗅ぎつけていたんだろうなぁ。
・・・というようなことを、30年ぶりに聴いて感じたのである。
ちょっとは大人になったかな?
しかし、今聴いても、ときめくことに変わりなし!(結論)
蛇足。
今回借りたCDは「Reflections(+4)」という最新のリマスター盤で、
オリジナルのアルバムには収録されていないシングル曲などが4曲、
ボーナストラック的に収録されていた。
録音時期が「Reflections」より古いということもあるかもしれないが、
楽曲のクオリティの落差に愕然としてしまう。
結果的に「Reflections」の質の高さが、
より一層際立つという意味においては、価値があったかもしれないが、
ちょっと・・・どうなんだろう?
同じ盤に収めることに、疑問を感じてしまうなぁ。
さて、この勢いで「Re-Cool」版も聴くべきでしょうか?
TSUTAYAにあることは確認済みなんですけど。
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