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2010年7月5日月曜日

【読書メモ】ZOKU/あなたにもいちどあいたいな/ノラや/古道具 中野商店

「ZOKU」森博嗣

森さんの本って、わりと読んでる方だと思う。
共通してると感じるのは、根底にひっそりと流れる“憂鬱”みたいなもの。
憂鬱というのは、ちょっと違うような気もするけど、
上手い言葉が見つからない。
なんだかやるせないような、気怠さが薫ってくるんだよね。

ところが。
この作品には、そういうのが無い。
あっけらかんとしたスラップスティック・コメディであった。
こういうの好きだ。
学生の頃好きだった火浦功さんの作風とちょっと似てるな。
続刊もあるようなので、楽しみである。





「あなたにもいちどあいたいな」新井素子

まぁ、良くも悪くも変わらないなぁ・・・。
なんというか、もう、ノスタルジーなのである。
私が少女時代にもっとも影響と受けた人が、新井素子なのだ。
だからね、もう、読み続けるしかないんだよ。

この人の凄いところは、少女性をいつまでも失わないところだ。
もちろん私より年上なのに、
いつの間にか追い越してしまったような気がする。
私の方が早く年老いていってるんじゃないか?

全ての登場人物が“新井素子”なんだよね、感じ方、考え方が。
まぁ、作者の創作物なのだから、当然なんだけど、
ここまで、そのことを意識させる作家はなかなかいないよね。
というか、普通は、人物の書きわけが出来てないということで、
プロの作家にはなれないような気がする。
それを堂々とやってしまっているのが凄いよな。





「ノラや」内田百閒

オススメの「猫本」ということで、紹介していただきました。

せつなかったぁ。
猫に依存して生きている私としては、すごく共感するのだけど、
それにしても、百閒先生の落胆ぶりにはせつなくなる。
こんな情けない姿を、普通なら隠そうとして無理するだろうし、
その無理もできないほど年老いた惨めさも晒してしまうなんて。
そういうところが表現者のすごいところだなぁ、と思う。





「古道具 中野商店」川上弘美

なんとなく、タイトルが気に入って借りてみた。
レコードでいうところの、ジャケ買い。(買ってないけど)

面白かった。
大事件が起こるわけでもないのに、最後まで淀みなく読めてしまった。

タイトルから受ける印象のとおり、
ちょっと時代に乗り遅れた感じのする登場人物たち。
それぞれのキャラクターが良いんだけど、
主人公のヒトミの目線がいい。
基本的に淡々としているんだけど、恋愛絡みになってくると
ウジウジとしてみたり、急に投げやりになったり、
めちゃくちゃ“普通”の女子なのよ。
だから、大抵の女性は共感してしまうんじゃないだろうか、上手いよな。

とにかく文章が上手い。
他の著作も読んでみたい。



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